岩手県北上市。縄文時代中期の集落跡「樺山遺跡」を越えた先、森の奥深くに現れる〈the campus〉。かつてここにも縄文人が暮らしたのだろうか。今はそんな面影があるわけもなく、一見するとキャンプ場らしき光景が飛び込んでくる。だが、キャンプ場というわけでもないようである。では、いったいなんなのか?
そこにあるのは、縄文の森の中に佇む“キャンパス”。遊び場であり、学び舎でもある。キャンプはもちろん、ツリークライミングやマウンテンバイク、サウナ、ドローンなど、体験コンテンツは枚挙にいとまがない。大人の知的好奇心を刺激するベースキャンプとでも言えようか。
もともとここには牛が放牧されたチーズ工場があった。開けた芝生の広がる、約15haの広大な敷地はそのためだ。そして、その跡を継いだのが、近藤設備の代表である近藤正彦さんだ。前の所有者はもともと本業で付き合いがあったのだという。いろんなことが重なり、同社が引き継ぐことになった。
「ただキャンプを楽しむだけじゃなくて、学びや発見のある場にしたい。ここは学びがテーマです。大学のキャンパス、キャンプ、us、明日、いろんな意味を掛け合わせて、『the campus』という名前をつけました」
そう話す近藤さんだが、なぜ設備会社がこんなことを?という疑問が拭えない。
「私としては一つのことをやっているつもりなんだけどね。好きなことをやっているっていうか。『建設業だから』とか『地方だから』とか、いろんな“だから”はあるんだけど、何でもまずはやってみようと」
自らの首を絞めてしまう固定観念を一旦置いて、というよりも、むしろそれを活かしてしまおうという気概を感じる。そうして、このthe campusもはじまったのだった。まだ今はオープン前の段階だが、近藤さんはすでにオープン後のもっと先を見つめている。
「岩手で面白いことができる“へそ”のような場所にしたい。将来的には他の地域にも拠点を増やしたいですね」
県内外の人が岩手をもっと楽しめる拠点をつくりたい。そこには、近藤さんの個人的な強い動機があった。