うたがき優命園
〈the campus〉の周辺には面白い人やお店が集まっています。うたがき優命園もそのひとつ。
運営しているのは、河内山さん一家。耕さんと可奈さん、その息子さんと研修生の4人で、山林を含めた8ヘクタールの面積で、周辺の環境と調和した循環型農業を行っています。
うたがき優命園があるのは、岩手県奥州市江刺地域。キャンパスから車で10分程度行った場所にあります。作物が多く育つ畑や田んぼが広がり、その里山の中に河内山さんの住む家や小屋が建っていますが、もともとここは人の手が入っていない山間地だったそう。
1992年から河内山さんが住み始め、山から水を引き、自ら田畑を耕すことで、生活の場所をつくってきました。
「私たちは、これまで『里山』という言葉をキーワードに、暮らしづくりやイベントの企画を行ってきました。30年前にここに引っ越してきた頃は、里山という言葉はあまり使われていなくて、この辺りは『農業不利地域』だと呼ばれていましたね」
労働生産性や効率化を考えると機械が入れなくて、害虫が多い、農業がしづらい場所。そう見られていたのだそう。
「収益性を追うと、農業でなんとか稼いで、そのお金で燃料や材料を買って、というのが続いていく。でも、暮らしごとつくろうとすると、無理に稼がなくていいから、小さい機械で作業ができるし、燃料を買わなくても、自分で薪をつくって賄うことができる。収益性だけを考えたら、確かにここで農業をするのは非効率だけど、『暮らし』のことを考えるとそれだけでは図れないものがここにはあります」
今、河内山さんが栽培しているのは、米や麦、梅のほか、40種類以上の野菜など多品種の作物。米や一部の野菜は販売を行っていますが、育てているもののほとんどは自家用に消費しています。
また、羊や鶏、合鴨なども飼育していて、その飼料も自分たちで製造。春から秋の期間は、田畑に放牧することで、生えてくる雑草を餌に飼育しています。
食料、飲料、材料、燃料…、暮らしに必要なさまざまなものを自分の手でつくりだしていく。そうして、里山での暮らしづくりを河内山さんは続けています。
「手間はかかるんだけど、その手間の中から達成感や里山地域特有の自然との一体感、手応えを感じることができる。どの分野の仕事でも、食べていくための経済性を持ちながら、達成感とやりがいをどう味わかが重要で、結局人生なんて、それを追いかけていると思うんですよ。それを今はお金で買う時代だけど、ここなら暮らしづくりを通して、それらを得ることができるんです」
うたがき優命園の鶏が産んだ卵はキャンパスの白い家でもカフェメニューの中で使用しています。広い里山にある鶏舎でストレスなく、育てられた鶏の平飼い卵をぜひ味わってみてください。