北上市稲瀬町の米とキャンプ
〈the campus〉は、かつて縄文人たちが自然と共にある暮らしを営んでいた遺跡が残っている、岩手県北上市稲瀬地区にあります。多くの歴史遺産があり、おいしい農作物がたくさん栽培されているこの地域だからこそ楽しめるキャンプは、どんなものなのか。
今回の記事では、稲瀬町自治協議会事務局長を務める高橋辰一さんに教えていただいた稲瀬地区の歴史や特徴をもとに、この稲瀬地区の魅力を味わう〈the campus〉での過ごし方・遊び方を実践した様子を紹介します。
岩手県北上市の南東、北上川の東岸に位置する稲瀬地区。平安時代中頃に栄えた山岳寺院「国見山廃寺跡」や縄文時代の集落跡「樺山遺跡」など、北上市内で最も歴史遺産が多い地域です。
「稲瀬地区のある北上川の東岸は、平安時代の豪族である『安倍氏』が拠点を構えていたのではないかと考えられている場所でもあります。背に山がありながら、農作物を栽培できる平地に近い地域で、城や住居を構えやすい土地柄だったことがその理由。だからこそ、この地域に長く人が暮らしてきた歴史が残っているんです」と高橋さん。
続けて、「特に国見山廃寺跡は、世界遺産平泉中尊寺が栄える150~200年位前までは、北東北の仏教の一大聖地であったとされています。前九年合戦・後三年合戦を経て、北東北の支配者は安倍氏・清原氏・藤原氏と変わっていきますが、どの時代にあっても寺への庇護は変わらず、ますます大きな寺院となっていきました。36の堂塔、700を超える僧坊があったともいわれ、今でも地元には僧坊を連想させる地名や屋号が多く残っています」と話します。
山と川に挟まれた平地で、自然資源が豊富な土地柄が稲瀬地区の大きな特徴。稲瀬地区では、その土地柄から生まれた歴史遺産を多くの人に伝え、楽しんでもらうために「歴史遺産ガイドボランティア」や「国見山廃寺跡 ウォーキングガイドマップ」などの独自の取り組みを展開しています。
また、農業が盛んで、おいしい米や野菜が栽培されているのがこの地域の特徴だと高橋さんは話します。
「稲瀬地区の農業は米が主力です。岩手県のブランド米『銀河のしずく』は、この地域でも栽培されています。また、朝夕の寒暖差の激しい気候で育てられる『朝採れトウモロコシ』も人気です。とても甘くて、おいしいんですよ」
高橋さんに教えてもらった情報をもとに、この地域の歴史を感じながら、今回は稲瀬地区で採れた米を使って〈the campus〉でとっておきのキャンプ飯を調理!自分が食べるものはできるだけ自分たちで採取したり、つくったり。縄文のときから続く地方ならではの当たり前の暮らし。
スイッチひとつで何でもできる現代で、キャンプは薪を焚いて、飯盒で炊飯します。いつも家で炊く炊飯器のご飯とは違い、その時々の季節や気温、天気などにより炊き上がりも変わり、キャンプでは成功や失敗の全てが思い出の味になります。
稲瀬地区で栽培されている「銀河のしずく」は、米の食味ランキングで最高位の特A評価を取得した米で、おかずにも合う軽やかな味わいが特徴です。
今回はその最高の米と、ご飯のお供として〈the campus〉の近所にある「うたがき優命園」の卵を南部鉄器のスキレットで焼き、目玉焼きのっけ丼をつくりました。
キャンプの醍醐味は、不便を楽しむこと。この体験は、その地域の歴史や文化を肌で感じ、時をも超越した一体感と達成感が得られる素敵な遊びです。〈the campus〉は、このフィールドだからこそできる、この地域だからこそできる、学びに溢れたキャンプ場です。