2023 | 09.05 | TUE
双子が目指すパーマカルチャー「ふるまつ自然農園」

〈the campus〉から車で25分ほど、花巻市東和町にある「ふるまつ自然農園」。営んでいるのは東京から移住した双子の兄弟、古松義彬さんと信彬さん。ふたりはパーマカルチャーを実践しながら、無農薬・無肥料の自然農法で、野菜や穀物を栽培しています。

20代の頃にバックパックひとつで世界各国を旅していた義彬さんが、農業に興味を持つようになったのは、アジア諸国を訪れたことがきっかけ。タイの農村部の風景に影響を受けたといいます。

「僕が訪れた地域では水牛による牛耕が行われていました。150年くらい前の日本もこうだったのかなと感じる光景が、まだそこにあったんです。人々が知恵を絞りあって作物を育て、暮らしを楽しんでいる様子が新鮮でした」(義彬さん)

その感動を胸に次に訪れたオーストラリアで出会ったのが、パーマカルチャーという考え方。自然と共存する暮らしを、楽しそうに実践する人々に魅せられ、帰国後には「自分も同じような暮らしをしてみたい」と思い、岩手でパーマカルチャーを実践している自然農園ウレシパモシリ(以下、ウレシパモシリ)を訪ねます。

「ウレシパモシリには2ヶ月ほど滞在させてもらったんですが、特に食とエネルギーの自給率の高さに感銘を受けました。僕が憧れた生活が日本でもできるんだ、と。そこでここで働けないかと想いを伝えたところ、研修を受けられることが決まりました」(義彬さん)

研修を受けていくうちに岩手のことがどんどん好きになった義彬さん。「ここで出会った人たちと一緒に暮らしたい」という想いが高まっていったそうです。ちょうどその時、信彬さんが後を追いかけるように岩手を訪れます。

義彬さんが海外を回っていたころは、東京で会社勤めをしていた信彬さん。旅から帰ってきた義彬さんの変貌ぶりに衝撃を受け、自身も弟と同じ景色を見たくなりタイとオーストラリアへ。

「帰国してすぐ義彬が研修をしているウレシパモシリを訪れました。僕も義彬と一緒に農業をやりながら暮らしたくなって。後を追うように研修生になったんです」

「信彬が来てくれたこともあって、岩手で農業を続ける決意ができました。ひとりよりふたりの方ができることも増えますし。何より一緒にできたら楽しいと思ってたので、うれしかったですね」

そこで花巻市内で耕作放棄地つきの空き家を探し、現在の土地と家を紹介され購入。そこで自身たちの農園を始めることに。

「前の持ち主の方が『農業を続けてくれる人に譲りたい』とおっしゃっていて。その方の亡くなったお父さんがずっとここで農業をやっていて、その農地を守りたかったそうです。畑にはしばらく手が入ってなかったので、まず小麦や大麦、大豆などの穀物の栽培をはじめました。岩手には雑穀の文化がありますし、耕作放棄地だった土地を豊かな土壌にするためにも穀物が適しているんです」(義彬さん)

ウレシパモシリでの農業研修を受けながら、ふたりが学んだのは「自然を観察する」こと。土壌や地形を観察することで、その土地に合った作物や農法を探る。そうすることで農薬や肥料に頼らずに野菜や穀物を育てることができるといいます。

「自然栽培で育てた野菜やお米は、本来の風味がぎゅっと凝縮されるんです。食べた時に『あっうま!』って。体も喜ぶんですよね」(信彬さん)

ふたりに案内され農園をめぐると、お互いにいい影響を与えるコンパニオンプランツを交互に植えたり、地形を活かした灌漑法を編み出したりと、いたるところに工夫が。米や麦、きびなどの穀物だけでなく、トマトやナス、とうもろこしなど季節の野菜も栽培。ふたりの目指すパーマカルチャーが作物作りに結びついていました。

「この広さをふたりで作業するのも大変なんですけどね。休憩の時に高台から畑を見下ろすとほっとひと息つけるんです。ふたりともこの景色が大好きで。ゆくゆくは都会に住んでいる友人たちにも農作業や自然と共存する暮らしを体験してもらえるような場所にしていきたいなと思っています」(義彬さん)

〈the campus〉では、「ふるまつ自然農園」で育った野菜や穀物を使用した食事メニューの提供を計画しています。ふたりの目指すパーマカルチャーによる、本来のおいしさを引き出した野菜やお米をお楽しみに!