2022 | 09.25 | SUN
白い家の食材は
どこからくる?

白い家のレストランでは、自家栽培した食材を使うのはもちろんですが、地元で育った新鮮な野菜も扱っています。北上市内で1年を通じて約80種類の色とりどりの野菜を育てている〈うるおい春夏秋冬〉さんからは、週に1回採れたて野菜を届けてもらっています。

栽培の様子を見させてもらおうと、うるおい春夏秋冬で出荷・飲食店配達の担当をしている細田真弓さんの案内のもと、圃場を見学してきました。盛岡市出身の細田真弓さんは、上京後に北上市へ移住し、農業に携わりはじめたとか。訪れた時期が夏だったため、ズッキーニやナス、ケールなどの栽培がメインでした。

どんどん耕作放棄地になっているという北上川沿いの古い農地を少しずつ借りて農場を広げ、現在では約40の大小さまざまな圃場を有していると言います。昔から川の氾濫が起きていた北上川周辺の土は肥沃で、農業に適した環境が整っているそうです。

種類豊富で彩り豊かな野菜を育てているのがうるおい春夏秋冬の特徴ですが、そこには一皿の料理の中で彩りを意識しているという農場主・高橋賢さんの思いがあります。もともと東京で寿司職人をしていた高橋さん。震災を機に実家にある北上で兼業農家をしていた実家に戻り農業をすることに。

就農10年目を迎え、幅広い年齢やキャリアの人材が集まる職場になっていて、年間をとおして加工品やイベントの企画を自分たちで行う。

それぞれの圃場には担当者が決められていて、目印になるようにといろんな国旗が掲げられています。例えば、イスラエルの国旗がある圃場は和食の料理人に貸しているそうで、料理人自ら育てた野菜を自分で調理して使っています。この料理人のおかげで、規格外の作物を漬物に加工して販売できるようになったことは、農場にとって大きな影響でした。

「規格外の野菜を和食の職人さんに漬物にしてもらったり、自分たちでも販売するようになったら、売上が増えたのはもちろんですけど、お客さんも少しずつ変わってきてて、『傷のあるものでもいいよ』って言ってくれる方も増えてきましたね」

こうした料理人以外にも、研修に来ている人や地元のおばあちゃんたちなど、多彩な属性の人がスタッフとして関わっています。多種多様な人が交わることで、おいしい食材や面白い取り組みがここから生まれているのかもしれません。

「法人化はしていないのですが、スタッフは12~13人ぐらいいます。就農希望の人が研修に来ているパターンもあったり、子育てが落ち着いた世代の人が来たりとか。規格外の作物が毎日出るので、うちの職場で働くことの特としてそれを持ち帰れるようにしています。」

産直スタンドでは「すいませーん」と声をかければ、日替わり店長が出て来てくれる。

店長が日替わりという産直スタンドでは、オーダーすると冷蔵庫から野菜が出てくる仕組みになっています。作り手の人との会話を楽しみながら野菜が買えるという点では、これが本当の産地直売だなと感慨深くなります。

最後に、農業の何に惹きつけられているのか、その魅力を真弓さんに聞いてみました。

「非農家の出身なので、スーパーで陳列されている野菜しか知らなくて。野菜1つ1つの種の大きさや形、成長過程や最後の実のなり方はどれも感動します。採れたてのものを畑で頬張った時の味わいは、太陽や土の味がすると思っています。私自身は美味しい料理も好きですが、その素材の生まれる現場が面白くて四季を通して目が離せませんね。」

北上で思い思いの暮らしを送りながら、野菜づくりを愛する人々の手によって、うるおい春夏秋冬の野菜が各地へと届けられています。