赤身の絶品料理
〈the campus〉の敷地内でひときわ目立つのが、通称・白い家と呼ばれる建物だ。部屋の中央にはキッチンがあり、無垢材の長いテーブル。気軽にも本格的にも料理をぞんぶんに振る舞える。スペインのバスク地方に会員制食堂が「美食倶楽部」というものがある。厨房で会員たちが自分たちで食材を持ち寄り、料理をし、集まって楽しむ。最古は1870年にサン・セバスティアンにできたものだという。白い家のキッチンも、美食倶楽部に近いスタイルとも言えるかもしれない。
今晩料理されるのは、「いわて短角牛」を使ったメニュー。いわて短角牛は脂肪分が少ない赤身肉のため、噛みしめたときの弾力と口の中でぎゅっと広がる肉の旨みがたまらない。
いわて短角牛は「赤べこ」で知られる赤茶色の日本短角種の一種。沿岸と内陸を結ぶ“塩の道”で物流の動力として活躍していた南部牛をルーツに持っているからか、厳しい自然環境にも適応できるという。育成期間は広大な草原でのびのび過ごし、その後牛舎で丁寧に育てられている。それゆえ滋味深い味になっているのかもしれない。
大きな肉の塊を加工するところから調理するため、肉料理のバリエーションも豊富。ステーキはもちろん、自家製ソーセージもぜひおすすめしたい。
牛の肩甲骨周辺の部位「とうがらし」をご存知だろうか。肉質は筋がありやや粗いものの、赤身の旨みと肉汁のジューシーさは格別だ。表面をさっと焼いてレアに仕上がった肉をひとたび口に運べば、手が止まらなくなるだろう。短角牛のおいしさを確かめてみてほしい。
白い家の外にある窯は、近藤設備の職人たちが圧力タンクを改造してつくったものだ。
職人の手に掛かれば、フォカッチャやピザがしっかり焼ける本格ピザ窯に様変わり。窯で焼いたできたてフォカッチャと肉料理、ワインがあればもう言うことはない。レストランでもシェアキッチンでもない。うまいものをただクックして提供する。こんなスタイルがキャンパス流だ。