2022 | 12.17 | SAT
パーマカルチャーを実践する
自然農園ウレシパモシリ

〈the campus〉から車で30分。花巻市東和町にパーマカルチャーを実践しながら、農作物の栽培・販売を行う「自然農園 ウレシパモシリ(以下、ウレシパモシリ)」があります。ウレシパモシリはアイヌ語で「この自然界そのもの」を意味する言葉。その由来通り、無農薬・無化学肥料による米や野菜の自然栽培、豚や鶏の飼育が行われています。

ウレシパモシリが開設したのは、1995年。千葉県の大学で農業研修に参加し、無農薬栽培を実践した後、ニュージーランドでパーマカルチャーを学んだ園主の酒勾 徹さんが出身地の北上市付近で自身の考える農業を実践できる土地を探していたところ、今の場所を役場の人に紹介してもらったそう。

「もともとは木や藪が生い茂り、耕作放棄地ばかりが広がっていた、農業で食べていくにはすごく厳しい条件の土地でした。ただ、家の周りに農地と山があって、農薬を散布しなくても他の農家さんの迷惑にならないという条件をクリアしていたのがこの場所だったんです。そこを27年、自分たちで整備しながら作物を育ててきました」(徹さん)

今は、息子の合歓(ねむ)さんら家族と4人の研修生とともに、農園を運営する徹さん。

栽培しているのは、米や麦、雑穀、野菜、果樹などさまざま。野菜はほとんどを自家用で消費していますが、春はのらぼう菜、夏はいんげん豆やきゅうり、冬は里芋やヤーコン、さつまいも、菊芋などを販売。栽培した米は、煎餅などの加工品も製造し、販売しています。また、鶏と豚を飼育し、鶏卵や豚肉は飲食店などに卸売しています。

豚肉が出荷されるのは月に2頭のみ。〈the campus〉では、特別仕入れられた時期にウレシパモシリさんの豚肉を使った料理を提供しています。

豚の飼育を担当しているのは、合歓さん。生後二ヶ月齢のバークシャー種の黒豚を定期的に引き受け、通常の養豚より2〜4ヶ月程度長い期間をかけて、体重120kgになるまで飼育。エサに使っているのは、花巻産の麦と大豆、米を混ぜて発酵させたものや野草など。「豚に無理をさせない」飼育を行っています。

「普通の養豚と違うのは豚舎の地面をコンクリートではなく、籾殻などを用いた発酵土にしていること。発酵土は冬でも電気を使わずに暖かく、一般的な養豚に比べ匂いもそれほど気になりません。また、豚舎の裏山に豚がいつでも行けるように柵を張っていて、自由にストレスなく過ごすことができるようにしています。薬を使ったり、しっぽを切ったり、本来の姿ではない飼い方をしていると、それだけ病気になる危険性が高くなったり、食肉にしたときに臭みが出てしまう。それらを避けるためにも、豚に無理をさせないことを大切にしています」(合歓さん)

養豚だけでなく、ウレシパモシリのみなさんが農業を行う上で大切にしているのは、「永続可能な農的暮らしをデザインする」パーマカルチャーの教えの通り、「長期的な視点を持ちながら、自然の立場に立って利益を上げる」こと。

「利益を上げるというのは、お金を儲けることではありません。この農園の空間全体の命のボリュームを増やすということ。本来、経済的というのはそういう意味の言葉なはず。この土地が最大限に生かされる範囲で、農業を続けていこうと思っています」(徹さん)

今後は、農作物の栽培や販売のほかに、「自給」の範囲の中で、農園の空間を生かした農家民宿のオープンや体験・企画づくりを考えているとのこと。ウレシパモシリのみなさんとともに〈the campus〉でのパーマカルチャーや農業の勉強会、イベントの実施も検討しているので、ぜひお楽しみに!